超高周波誘導加熱装置を用いたアルミニウム合金の熱処理
アルミニウム合金は軽量(比重は鉄の約1/3),比強度(強度÷密度)が比較的高い,加工性や耐食性,リサイクル性に優れるといった特徴から,自動車,鉄道,船舶,航空宇宙,産業機械,医療機器等の幅広い分野で利用されています。
一部のアルミニウム合金では,機械的性質(強度や延性)を改善するために熱処理を必要とします。熱処理には長時間を要するため,省エネ,省コスト,生産性の観点から効率化が求められています。
我々の研究室では,温度制御性に優れる超高周波誘導加熱装置を熱処理に適用し,従来の熱処理装置では実現が困難な特徴的な温度履歴を付与することで熱処理の効率化を目指すとともに,優れた機械的性質ならびに品質を得るための熱処理条件に関して研究を行っています。
双極子プラズマ窒化装置を用いたステンレス鋼の窒化処理
ステンレス鋼は耐食性に優れる鉄鋼材料として良く知られています。一方で,ステンレス鋼の中でも最も多く使用されるSUS304鋼は,他の鉄鋼材料と比較して低強度といった欠点もあります。そのため,ステンレス鋼の最大の特徴である耐食性を維持しつつ,高強度化を実現する手法として窒化処理等の表面改質が実施されています。窒化処理では,金属材料の表面から窒素を浸透・拡散させて,硬質な窒化物や窒素原子が固溶した層(窒化層)を形成させることで表面を高硬度化することが可能です。
我々の研究室では,プラズマの形成と被処理材への窒素の供給とを独立して制御可能な双極子プラズマ窒化装置を用いたステンレス鋼の窒化処理に関して研究を行っています。
強ひずみ加工と熱処理を併用したアルミニウム合金の機械的性質の改善
自動車や鉄道,船舶,航空機といった輸送機器では,燃費の向上を目的として軽量化が求められています。そのため,それら輸送機器を構成する構造材料には,「軽くて強い」金属材料を選択する必要があります。アルミニウム合金は,鉄鋼材料と比較して軽量ではありますが,強度の面ではまだまだ改善の余地が残されています。
金属材料の強化機構として,転位強化(加工硬化),粒界強化(結晶粒微細化強化),固溶強化,析出強化(分散強化)等が挙げられます。我々の研究室では,アルミニウム合金に対してこれらの強化機構を様々に組み合わせることで各強化機構の複合効果を狙い,機械的性質の向上を目指しています。
摩擦攪拌プロセスを利用したマグネシウム合金の改質
マグネシウムは実用金属材料中で最も比重が小さく,比強度に優れるため,輸送機器の軽量化に対して注目されています。一方で,加工性や耐食性に劣り,また発火温度が低いという課題もあります。
我々の研究室では,摩擦攪拌プロセスという手法を応用してマグネシウム合金中に様々な元素を添加することで,局所的に合金化し諸性質を改善する研究を行っています。
摩擦攪拌現象を利用した異種材料の接合
製品において優れた機能の付与,軽量化,材料の効率的な使用を目的として,一つの部品を複数の素材で形成するマルチマテリアル化が検討されています。マルチマテリアル化においては,異種材料の接合技術が課題となっています。
我々の研究室では,異種材料の接合に対して摩擦攪拌現象を利用する研究を進めています。特に,アルミニウム合金と樹脂材料の接合に関して,アルミニウム合金の表面状態が接合強度に及ぼす影響を調べています。